歯科用マイクロスコープを使うと、最大20倍まで拡大することができます。また、術野を照らすライトが、視線と同じ方向に光を照らすので影が出来ず、従来の肉眼での治療よりもずっと細かいところまではっきりと見て治療をすることができます。
したがって、悪い部分を見逃さずに取り除き、健全な歯質はできるだけ削らずに残すことが可能になっています。
コンポジットレジンの接着操作を“ラバーダム防湿下”で行うことで、口の中の湿り気を遮断して、接着剤の持つ能力を最大限に生かします。
コンポジットレジンの重合収縮による接着界面の破壊を防ぐために、収縮率の低いレジンを薄く窩底に敷くライニング操作や、特殊ポリエチレン繊維を用いた重合収縮応力の緩和などの対策を講じます。強固な接着を確実に得られるように保険診療では使えない材料と時間と手間をかけます。
歯髄腔(神経のある部分)までむし歯が達していた場合、歯髄そのものをマイクロスコープで観察することによって、病的な歯髄は除去して健全な歯髄を残す「部分断髄」という処置も場合によっては可能です。
以上のような点で、再治療のリスクを極力減らし、歯が長持ちすることにつながる治療であると考えています。
ゴムのシートで歯を隔離します。虫歯治療の場合は治療対象の歯だけではなく、数歯をゴムのシートから露出させます。
口の中の空気は唾液や呼気中の水分のために湿度が100%に近い状態にあります。 コンポジットレジンの接着操作の際にはこの湿度が接着強度を低下させると言われています。
ですから、ラバーダムをして接着操作をするということは、接着剤の性能を引き出す治療であるといえますから、むし歯の再発リスクも下がると考えています。
また、新型コロナウイルス感染症対策としてもラバーダムは有効であると考えられています。口腔内の唾液から遮断されるので、回転切削器具がエアロゾルを発生することがあっても、ウイルスがいる唾液を巻上げないので、飛沫感染を防ぐことにつながると推測されています。
むし歯が深いところまで及んでいて、歯髄(神経)まで達しているかもしれないようなことがあります。レントゲン写真だけでは判断がつかないこともしばしばあります。
そのような場合、マイクロスコープを使って拡大視野で慎重に削っていくことによって、偶発的な露髄(神経が露出すること)を防ぐことができます。
また、歯髄までう蝕が達している場合、歯髄が部分的に壊死していて、それ以外の歯髄は健全なまま保たれている場合があり、健全な部分の歯髄を残していけることがあります。そのような時はMTAセメントやバイオセラミックという材料を用いて直接覆髄、または部分断髄と呼ばれる処置を行うことができます。マイクロスコープを使うと、歯髄をじかに観察できるので、歯髄の健全性の判定が正確になります。
どのような場合も必ず神経を残せるとは限りません。
むし歯の大きなケースではすでに歯髄の壊死が始まっていることもあり、たとえう蝕治療時に歯髄腔まで切削しなかったとしても、後日不可逆性歯髄炎や歯髄壊死が起こってくることもあります。特に術前に痛みの症状や痛みの既往があった場合は可能性が高くなります。
不可逆性歯髄炎や歯髄壊死が起こってきたら、根管治療が必要になります。
マイクロスコープむし歯治療をもってしても、根管治療が必要になる可能はゼロにはなりませんが、神経を残せる可能性は高まります。歯の神経を残すことができれば、将来歯根破折などで歯を失う可能性はかなり下げることができます。
ですから、歯を長く残すためにはマイクロスコープ精密むし歯治療を行うことがより望ましいと考えています。
当院では自費でマイクロスコープ精密むし歯治療を受けたあと1年以内に根管治療が必要になった場合、当院での自費の根管治療の費用からマイクロスコープ精密むし歯治療の費用を差し引きます。もし根管治療が必要になった場合でも精密な治療を自費で行って歯を長く残したいと考えている人は、大きなむし歯をマイクロスコープ精密治療を受けることをおすすめします。神経を取らずに済む可能性が高いですし、仮に根管治療が必要になっても費用的には最初から根管治療をした場合と変わらないからです。
1)コンポジットレジン充填(ダイレクトボンディング)
う蝕を除去した後で、コンポジットレジンをラバーダム防湿下で充填します。最小限の切削で済むので、比較的小さいむし歯は第1選択になります。セラミックや金属に比べて材料そのものの強度と耐久性は下がるので、破折の恐れのある大臼歯部の大きなむし歯には向かないことが多いです。
2)インレー、アンレー
う蝕除去した後で、コンポジットレジンをラバーダム防湿下で充填した後で、インレーが収まる窩洞を切削して、型を取り、技工士さんが作ってくれたインレーを後日接着します。
大きいむし歯では、大きい穴を削ると周りの天然の歯質が薄くなって強度が保てなくなるので、咬頭(山の部分)を覆ったアンレーという形態のものを作成します。
コンポジットレジンより材料そのものの強度は高いので、強い力のかかる部位に選択します。インレーを収めるために便宜的に歯を削る部分があるので、むし歯が小さい場合歯を削る量はダイレクトボンディングよりも増えます。
3)クラウン修復
う蝕の範囲が広く、歯全体を覆う場合にクラウン修復をする場合もあります。
う蝕を除去した後で、コンポジットレジンをラバーダム防湿下で充填した後で、クラウンをかぶせる土台の形を形成し、仮歯を入れます。後日型を取って、技工士さんが作ってくれたクラウンを後日接着します。
当院ではマイクロスコープ精密むし歯治療は自費で行っています。保険診療ではまかなえない時間と材料と技術をかけて行うからです。(保険診療でのむし歯治療では4.5倍のルーペを用いて行っています。)
インレー修復やクラウン修復を行う場合は、別途インレーやクラウンなどの費用が自費でかかります
1)マイクロスコープ精密むし歯治療 + ダイレクトボンディング(顕微鏡CR充填)
15,000円 + ダイレクトボンディング 25,000円 = 40,000 円
2)マイクロスコープ精密むし歯治療 + インレー、アンレー充填
15,000円 + 自費インレー、アンレーの費用
自費インレーアンレーの費用は、
セラミックインレー 50,000円
セラミックアンレー 60,000円
ゴールドインレー 50,000円
ゴールドアンレー 62,000円
ジルコニアアンレー 62,000円
3)マイクロスコープ精密むし歯治療 + クラウン修復
15,000円 + 自費クラウンの費用
自費クラウンの費用は、
ジルコニアボンド クラウン 140,000円
IPS e.max・クラウン (前歯) 120,000円
IPS e.max・クラウン (臼歯) 100,000円
フルジルコニア・クラウン 90,000円
ゴールド・クラウン 110,000円
当院では自費でマイクロスコープ精密むし歯治療を受けたあと1年以内に根管治療が必要になった場合、当院での自費の根管治療の費用からマイクロスコープ精密むし歯治療の費用を差し引きます。
当院は保険医療機関ということもあり、マイクロスコープを使わない保険のむし歯治療も行っています。自費の精密むし歯治療の案内を全員に行うことは行っていません。上記のような長い説明を保険診療で行う時間はなかなかとることが難しいからです。
マイクロスコープ精密歯科治療を受けることを希望される場合は、下のメール相談フォームやオンライン問診票、電話などで事前にお知らせいただけると幸いです。